台風のたまごはどこで発生する?どうやってできるの?
台風のたまごとは何の事なのでしょうか?そもそも台風とは、北西太平洋または南シナ海に存在する熱帯低気圧のうち、最大風速が17.2m/s(34ノット)以上のものを「台風」と呼びます。
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台風とは?その定義は?
熱帯低気圧は台風になりそうな熱帯低気圧が台風のたまごと呼ばれています。ちなみに気象予報用語には「台風のたまご」という用語はなく、俗称となっています。
熱帯低気圧とは?
熱帯低気圧は熱帯または亜熱帯地方に発生する低気圧の総称で、気象情報等で「熱帯低気圧」を用いる場合は、台風に満たない物をさします。
熱帯低気圧の特徴として、等圧線が同心円状に閉じており、低気圧が暖気のみで構成され(温帯低気圧は暖気と寒気で構成)、前線を伴いません。
台風のたまごはどこで発生するの?
熱帯低気圧は熱帯であればどこでも発生するというわけではなく、発生しやすい場所が決まっています。
◆海水温の高い海域である(海面水温が26.5℃以上。陸上では発生しない)
- 数値:地球全体で発生する熱帯低気圧の割合
- 破線:海面水温26.5℃の線
◆赤道付近では発生しない(転向力が小さいため)
◆北緯5°~25°付近で発生する事が多い(収束帯のため積乱雲ができやすい)
日本の南に位置する北太平洋西部は熱帯低気圧の発生数全体の36%を占め、最も発生しやすい場所となっています。
台風はどうやってできるの?
台風の発生は次のようなプロセスで発生すると考えられています。
1.熱帯の海域は水蒸気が豊富で熱帯収束帯など空気が集まりやすい場所では、空気が収束して上昇気流が生まれ、積乱雲の群れ(クラウドクラスター)ができます。
2.積乱雲のできる場所は水蒸気が水に変わる(凝結)時に潜熱が放出され、雲のない所に比べて温度が高くなります。夏に打ち水をすると水が水蒸気に変わる時に吸熱し、まわりを冷却する効果がありますが、これはその逆になります。
温度の高い空気は密度が小さいので上昇し気圧が低下、まわりから空気が収束します。収束する空気は多数の積乱雲をまとめ転向力が働いて、大きな渦上の流れが生まれます。
出典:気象庁
この転向力はコリオリの力と言われ、地球の自転に起因しています。コリオリ力は極地で最大、赤道で0となります。このため、赤道付近では転向力が働かず、風の収束が促されないので台風が発生しにくくなります。
3.渦上の流れにより収束がさらに促され、収束した空気が暖かく湿っていれば、積乱雲の発生、発達が強まります。さらに凝結による潜熱により温度は上昇して、気圧が下がり、さらに気流が収束します。このようなサイクルが繰り返される事により積乱雲は熱帯低気圧、やがて最大風速が17.2m/sの台風へと発達します。
出典:気象庁
台風の発生、発達には莫大な水蒸気の潜熱が不可欠です。このため、発生や発達するのは暖かい海域に限られ、台風が北上して相対的に冷たい海域に来た場合には、台風は衰弱していきます。
クラウドクラスターから台風へと発達するものは全体の数%と言われています。
台風はもとは積乱雲の群れ(クラウドクラスター)だったものが、水蒸気が雲に変わる際に放出される潜熱より、お互いに作用する事でより大きな擾乱(じょうらん)である台風へ作用していき、この大きな擾乱の効果が個々の活動も強める作用をします。
台風はどうやってくるの?
台風は1000~2000kmのスケールにも及ぶ現象ですが、台風自身ではわずかに北西に進むのみで、一般的には台風よりももっと大きなスケールの高気圧や(*1)偏西風などの影響を受けて進みます。
台風が発生する地域では太平洋高気圧のふちを回るように西または北西方向に進み、その後は北上していきます。日本付近の上空では偏西風が吹いており、この流れに乗る事で台風は北東に進路を変え、速度を速めます。
高気圧の張り出しや偏西風の位置には季節により特徴があるため、台風の進路も季節により、取りやすい進路があります。
*1:偏西風極を中心にして西から東に向かって吹く地球規模の帯状風。
平均的には、赤道付近と極地方の下層部を除く対流圏は偏西風域である。