熊本地震からの教訓~災害関連死・エコノミークラス症候群を防ぐ~
直接死の4倍以上が災害関連死
2016年4月に発生した熊本地震では災害関連死が相次ぎました。熊本県内で直接死が50人だったのに対し、その4倍以上にあたる218人が災害関連死で亡くなりました。災害関連死とは、災害による直接の死を免れたものの、その後の避難生活で体調が悪化するなどが原因で死亡し、災害との因果関係が認定されたものです。災害関連死の中には、持病の適切な治療が受けられなくなって死亡したり、心身の不調からうつ症状となり、自ら命を絶つケースもあります。
また、熊本県内の災害関連死者のうち70代以上が169人と全体の約8割を占め、死因の内訳としては、肺炎や気管支炎など呼吸器系疾患が63人で全体の約29%、くも膜下出血や心不全などの循環器系疾患が60人で約28%となっています。
エコノミークラス症候群を防ぐには
熊本地震では、18万人を超える人が避難し、建物へのダメージが大きく、多くの人が車中泊を強いられました。地震発生4日後の2016年4月18日、熊本市内の自宅の車で寝泊まりしていた50代女性が突然倒れ、エコノミークラス症候群が原因で死亡しました。その後も同様のケースが相次ぎ、災害関連死者のうち、60人がエコノミークラス症候群が起因となったというデータがあります。
車中泊などにより、長時間同じ姿勢でいると、足などに血栓(血液の塊)ができ、それが肺動脈に詰まる病気を「肺血栓塞栓症」と呼びます。飛行機のエコノミークラスの狭い座席に長時間座っていて、急に立ち上がったときなどに発症することが多いことから、「エコノミークラス症候群」とも呼ばれます。呼吸困難や胸の痛み、さらには心肺停止を引き起こす恐れがあり、災害時の車中泊なども、長時間同じ姿勢でいることを強いられるたり、十分な水分や食事とることが出来ずに危険度が高まることが指摘されています。
エコノミークラス症候群予防には、出来るだけ歩いたり、軽い体操や足首の体操、ふくらはぎのマッサージなどで血流を促し、こまめな水分補給を心掛けることが大切です。
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この記事の執筆者
森山 知洋 気象予報士/防災士/北海道防災教育アドバイザー
20年以上の気象予報士歴の中で放送局での災害報道や気象キャスターなど様々な業務を経験。防災講演の講師を務めるなど防災や健康気象のスペシャリストとしても幅広く活動中。